私は結局、いつまで経っても世界のあり方を決められなかった
私は取り柄のない人間だ
彼には耳がいいなんて言ったけれど、それは音階がわかるだけで、ただそれだけだった
+
感情を込めずに鍵盤に触れる
ーFー
ファ、彼の国の言葉でヘ
f、フォルテ
フォックストロット
ーー口 言葉 神ーー
あのときの私は左目が治ってよかっただなんて、能天気なことを考えていた
そんな、簡単なわけがないのに
/
その存在は、言いにくそうにした。
(あなたは少し印象が違いました)
「……」
(もっと迷いなく、直感的で、判断が早く、けれど決して間違えない)
「間違えない……」
(社会規範、倫理、政治的にも正しい答えを選び続けられるような、彼の話だとそんな風でした)
その存在は理想的な存在について語っていて、当然それは私ではなかった
(彼のような人間が託したいと思う人なら、そうなのかも、と)
私は情けなさを感じながら白状した
自分はそんな立派な人間ではないのだと、けれど彼の前ではそう演じていた
そうすべきだと思った
彼には理想を示したかったし、私自身理想になりたかったのかもしれない
(演じきれていた、のだと、思います)
……そうね
+
けれどそんなのは詐欺じゃないか
なんでもわかるふりをして、何もできなかったというのに
気づくことさえ
(でも)
その存在は謝罪するように付け加えた
(人はあるがまま、よりも、あるべき、を選択すべきだと思います)
(あなたは間違っていなかったと、思います)