nix
ラジオにノイズが入った。外に出ると雪が降っていた。
明りに照らされたところだけが雪が、上から下に流れて行く。
それをぼんやりとみていると、まるで自分が昇っているような感覚を得ることができた。
けれど私はどこにも行けない。
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その年はいつもよりも雪が降るのが遅かった。
「今年はもう、降らないのかと思っていた」と訊いてみた。
ーでも、降るのが遅い年もあるでしょうー 地球なら、とその存在は付け加えた。
「そうだね。地球ならいろんな年があったね」
ー毎年同じ日に降らせることもできるけれど、それって地球らしくないでしょうー
彼らは『人間らしさ』を(日本人が使っていたところの意味で)『ヴァーチャル』と同じような意味あいで使っていた。
彼らにとっては人間らしさと、地球らしさは、どちらも同じくらい重要なものだった。
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彼らは人間の続きをしなければならないけれど、私にはもう何もなかった。
もともと、彼らの思う無秩序、あるいは自然というのは、どこまで行っても綺麗なもので、だから彼らは人間になることはできないのだけれど、私はそれでいいと思っていた。
この世界の表面が白くなると、より一層物寂しく感じる。着実に終わりに近づいている間隔。もっとも彼らは、地球のようなここを可能な限り存続させ続けるだろう。ランダムに徹しないところは、かなり人間らしさを感じるが。
雪の積もったこの星の景色は、死期を悟ったあの子を想起させた。
死を受け入れて、諦め……とは違う、達観、悟り、どれも違うか。
ただ自分の身に訪れる次の変化を当然のものだと受け入れていた。
私はそれがまだ理解できなかったから、今でも理解したとは言えないし、あの子が何を考えていたのか、ほんとうのところ、理解できるはずもない。ただ、そうだとすれば自分の中で納得がいくから、そうだったのではないかと思っているだけだ。ただの推測。
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その子はただ元気がないだけで、食欲がないだけで、触ると暖かくていつものように優しい顔で眠っているように思えた。それがその子を見た最後だった。