あなたは気づいただろうか
Syrup16gの
歌の一説にある部分が
そう言う風に聞こえた
でも、そう歌っていたのかもしれない
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子供のころから有名になりたいと思っていた
そうしたなら
何か楽しくなるのではないかと
漠然と思っていた
それは生きていくための希望だったのかもしれないが
それと同時に決して叶わないが故
僕の人生は一生詰まらないままなのだと
あの時点ですでに答えを出してしまったともいえる
言うまでもないがつまり
僕の人生は一生詰まらないままだと
そういうことだ
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なんだ君は
有名になりたいだけだったのか
判っているのなら
アブラメリンになど手を出すべきではなかったのだと
あなたは僕を笑うかもしれない
それは違うと言わないといけない
微妙に、だが
アブラメリンは自己の起源をさかのぼる秘術であり
それが必ずしもなすべきことを示すとは…
いや、こんなのはへ理屈に過ぎない
有名になりたいというのは
起源から発生するものではない
肉体から離れた
ゴミのような上澄みの
テキストによる思考
それにくみ取られなかったただのありきたりな潜在意識
つまり有名になるというのは結果で
またそれ自体精神から(精神を下に見るわけではないが)
精神の孤独から生まれたものに過ぎない
それはつまり孤独でなくなれば消えてしまうもの
絶対性を持った人生の目的とはなりえない
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あなたは今有名だろうか
何をもって有名とするのか
誰もが発信できる社会
そんな中で有名であることに価値などない
むしろ真の孤独こそ貴重なものとなっていくだろう
そうかもしれない
でも僕はもうhermitであることを望まない
僕はもう多分
もう多分
多分駄目なのかな
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駄目だけど
死ねない以上
終わりにできない以上
向上していこうとするしかない
判っている
あなたはどうですか
あなたは自己の起源を把握し
またこれからの指針を正しく見つけられているのか
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懐かしい歌が聴こえて
僕は目を覚まさなかった
息をひそめて
扉の鍵を閉める
何も望んでいない
意識を失って
世界と調和できたなら
それはきっと至福だろう
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人間である以上
避けられない
縄張り争いから解放されたなら
肉体の牢獄から
正しい手順を踏み
正確に精神のみを取り出せたなら
それは駄目だとあなたはまた言うだろうか
それはファンタズマビーイングだ、と
意識を消した場合それは精度が落ちる
戦おうという意思そのもの、
それがなくては駄目だ
プログラムだけではその愚かさに耐えきれないからだ
肉体から解き放たれれば
君は自分を失ってしまう
君はそれを閉じ込められていると嘆くが
それは世界と君を隔て
君を定義するという行為をなしているのだと
免疫によって自分を世界から守っている
世界と一体になろうとすることは
それは世界に対する敗北だと
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僕は戦おうなんて思っていない
君は僕の思考を母体回帰に過ぎないと笑うかもしれないが
いやもっと言うだろうか
カッコをつけたところで君の言うそれは単なる死に過ぎないと
君の死後
精神さえ世界によって分解されると
でも精神の行方は誰にも判らない
アカシックレコードに記録される可能性もある
そしてされない可能性もある
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あまり意味のない議論だった
あなたにつき合わせて申し訳なく思う
でも僕が生きて死後、ほぼ変わらない状態になったのだとしたら
それはあまりにも無意味だ
だから人は何かを残そうとしてきた
それができないのならば無意味を受け入れ、
自己を喪失し世界と同期すること
それができたならば多少は生きた意味はあったと言えるのではないだろうか
この場合求める先は真の無名
無記名
世界の始まりには名前はなかった
テキストのない状態への回帰