ずっと昔に終わってしまったことを今になってやり直そうとして、
それが上手くいくはずがない
そう言ったあの少年は今、何をしているのだろうか
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柱廊玄関に少年が雨宿りのために駆け込んでくる
柱からぶら下がった網籠に白猫が眠っている
猫はくあ、と欠伸をしてから訊いた
(こんにちは、あなたは人間?)
「はい、ロボットならペトリコールがわかるから濡れたりしないのでしょうね」
(処理がしてあるにしても、濡れないにこしたことはないものね)
服をハンカチで拭きながら、少年
「あなたは濡れていませんか」
(私はここで、雨の降る前から眠っていたから)
「しばらく続くようですけど、きっと雨と同時に夏も終わってしまうでしょうね。あるいはもう終わってしまったのかもしれません」
この時期の間断のないペトリコールとゲオスミンの混ざった匂い、これが終わるころには夏も終わってしまうのだろう