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かつてあったはずのなにか

皆様に幸多き事、お祈りいたします ※ わけあって画像の多くを消しました。意味が通らない箇所があるかもしれません。申し訳ありません。 文章雑な所がありますので、斜め読みで大丈夫です。 記事が表示されない場合は、削除がまだ反映されていないのだと思います。大変申し訳ありません。

テオドリクス5

「昔、蛍の写真を撮ったんです。でも現像してみたら何も写っていなかった」

(つまり、それは酷い誤解のたとえ?)

「ええ……」

 テオドリクスの言葉が言霊として世界に作用したのか、黄色い光が辺りに点いたり消えたり、空を飛んでいました。

(蛍ね)

「綺麗ですね」それから、でも、僕のカメラでは撮ることができない。そう呟きました。

 振り向くとメシエーの体に何匹かくっついていました。ブルブルと震わせると、その蛍がわっとあたりに散らばります。

(ねぇ、テレイザを呼んできてちょうだい)

「ですが……寝ていますよ。おそらく」

(起こしてあげたらいいじゃない。猫じゃないのだから。めったに見られないもの。起こさない方が可哀想だわ)

 でも、とテオドリクスはまだぐずぐずしていました。

(大丈夫よ。あの子も美しいものを美しいと感じることはできるはず。そういう感性はまだ残っているはずだから)

 まだ、というのが少し気になりました。



「テレイザ、夜光虫が来ています。綺麗ですよ。起きてみたらいいと思います」

 ちいさな声でした。別に起きなければそれでもいい、というような。ですがテレイザは起きました。テオドリクスは相当離れたところから声をかけていました。家の対角というか。

「や……夜光虫?」口元を押さえて、怪訝そうにテオドリクスを見ました。

「あ……はい。ディートリヒが呼んできたらどうかって。綺麗なので」

 しばらく見つめあって、別にふざけている様子もないし、とテレイザは考えて、壁際の本棚の百科事典を指さしました。

「夜光虫が来るわけがないでしょう。ここは海じゃないんだから」

 テオドリクスは意味がよく理解できませんでした。海と夜光虫に何の関係が……。
 ですが、意図を察して百科事典で夜光虫を調べてみることにしました。



 テレイザは寝間着に毛皮のコートを羽織って外に出ました。

 それを見て、というよりは感じたメシエーとディートリヒは駆け寄り、当然彼らをテレイザは撫でます。その後ろでテオドリクスはなんだか落ち込んでいました。

 テレイザは周囲を見回し、当然、夜光虫ではなく蛍が飛んでいることを確認します。

(綺麗でしょう)とディートリヒが言い、メシエーは鼻を鳴らしました。 

 テオドリクスは夜光虫は蛍のことだとずっと思っていたのです。だから少し、恥ずかしかったのです。

 テレイザは一応、テオドリクスに

「見られてよかった。起こしてくれてありがとう」と言いました。

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