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かつてあったはずのなにか

皆様に幸多き事、お祈りいたします ※ わけあって画像の多くを消しました。意味が通らない箇所があるかもしれません。申し訳ありません。 文章雑な所がありますので、斜め読みで大丈夫です。 記事が表示されない場合は、削除がまだ反映されていないのだと思います。大変申し訳ありません。

向日葵

ーーある夏、10時過ぎーー

男と猫、浜辺に向かって歩いている。
浜辺に向かうために、向日葵が沢山咲いているところを通ることにした。
猫が楽しげに先に進んでいく。

男の背丈ほどもある向日葵、ふと立ち止まってみるとちょうど男の顔と同じ高さにある。

向日葵としばらく見つめあって、少し微笑む男。
そのとき、先行した猫がニャアと男を呼ぶ。

小走りで猫の所へ向かう。どうも猫は花を見たいようだったので、男は優しく猫を持ち上げて、花の前に向ける。

猫は向日葵の花びらに鼻を近づけて、フンフンとにおいをかぎ、それから男と同じように花を見つめた。

(ねえ、この花、私たちの星座に似ているわね)

「本当ですね。そうだ、向日葵って太陽によく似ています」

(ヒマワリ?)

「太陽の方を向く花なんです、たしか」

(この子たちも太陽が好きなのね)

猫は納得して、向日葵畑を抜けて浜辺に出る。
男はゆっくりその背中を追う。

その途中、向日葵の林の隙間から子供たちが見えた。



男、浜辺に安物のシートを引いて座る。
猫、波に近づこうとする。

「駄目ですよ。危ないから」

猫、不満げに波打ち際から離れる。歩いているとその先に、さっき見かけた子供たちがいることに気が付く。小学生低学年くらいの男と女、だろうか。髪型から察するに、だが。

麦わら帽子を目深にかぶった女の子の方が、猫の方を見ている。ように思えた。目は見えない。こちらからは。

(知ってる子たち?)猫が振り返って訊いた。

「いえ、でも多分、優しそうな子たち、だと思います」

(ふうん)

男女、すれ違う時、男に挨拶をした。当然、男もそれに応じた。

猫、害意はないと判断したのか、女の子の脛(長ズボンで覆われていた、夏なのに)にすり寄った。女の子、うれしそうに猫を撫でる。

しばらく、その様子を眺める男。

猫、男の子になにか寂しさを感じたのか、近寄っていく。男の子、喜んで、けれどとても慎重に猫を撫でる。

それを見て、なぜか安堵する男。

名残惜しそうに別れる。



家路を歩く猫と男。

(さっきの子たち、兄妹かしら)

「どうでしょうか」男、少し悩むそぶりをする。

『あきらかに二人で服装に差があった。男の子と女の子ではそれは、服の質に違いは当然出るものかもしれないが……。それに男の子の顔と腕は、おそらく殴打によって腫れあがっていた』

『あるいは、女の子の方はけがを隠すために、肌を出していなかったのかもしれない』

『虐待』

男、振り返るがもういない。砂浜についた足跡をたどるが、途中で消えている。

(もう帰ったのね)

「そう……ですね。きっと……そうですね」男は救えなかったと、後悔する。

(きっと兄妹よ)

「なぜ、そう思うんですか」

(だって二人ともそっくりだったわ。笑ったときの顔)

男はなぜか涙が止まらなくなる。

(なぜ泣くの)猫は心配そうに見上げる。

「わかりません。でもきっと、そう、兄妹ですよ。きっと、そうだ」




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