また雪が降っている。
ーーそれはそう、だって冬だからーー
僕はうんざりした気持ちで、玄関の扉を閉める。
ーー明日は除雪から始まるーー
きっと君は、僕を見て笑うかもしれない。
*
ねぇ、アキツミカミってなに。
ーーわからないけれど、いえ、判らないものについて語るのはやめましょう。それは辞書の仕事だからーー
*
なにもかも真っ白ねえ。
ーーホワイトアウトーー
たまに思うことがあるのよ、私、人間とは目が違うから。
ーーはいーー
人間の世界には、たくさん色があるなあって。
ーーだから雪が好き?ーー
好きとか嫌いではなくて、だから雪が降ると、ただシンプルになるなって思うの。
*
こういう雪ってなんていうのかしらね。
ーーきっと間違っているんです。でも僕は牡丹雪って呼ぶことにしているんですーー
間違っているのに?
ーーはい。真実はどうでもいいんです、もう。ただ僕が牡丹雪って呼びたいんです。世界というのは、それで十分じゃないかって最近思うんですーー
牡丹が好き?
ーーそれさえもうわからないんです。でも牡丹雪という言葉は好きですーー
……。
ーーそれはきっと嘘じゃないーー