ここはまるで終わりもなく
始まりも待たない空間だった
ただ体にはねばつく液体のようなものが
逃れがたく絡みついていた
始まりは判らないがおそらくBC1億くらいだろうか
くそ、こんなことなら最初から炭素年代測定の器具を持ってくるべきだった
と後悔する
後悔が先に立たないのは当たり前のことだが
この空間においてはまさしく正鵠を射ていた
終わりも始まりもない
ウロボロスが頭を失ったような
そんな空間だった
ここでは1年かもしれないし
だがそれは1日かもしれない
つまりこれは不確定な足場で物事を進めることは難しい
ゆえに1日で1年が経過すると仮定する
つまり明日は2019年だ
これは始まりに見えるかもしれないが
その実、その瞬間での終わりでしかない
ここまでの内容が理解できたというのなら
あなたは世界を一つ作る権利を得たも同義だ
さあ、その殻を破り外へ出なさい
そは古より宇宙卵と呼ばれしもの
失われた時を刻む
時計の針
ただし、針は文字盤のうえには存在しない
4次元的、あるいは5次元的に
その針は時間を指し示し続ける
ここまできいてなにか質問はあるか
僕は少し考えたふりをして
最初から決めていた質問を口にした
きっと彼にはそんなものお見通しだったろうけれど
全ての人類を……
いや、もうよそう
彼はまじめすぎるがゆえに
終わりを望みすぎていた
だからせめて彼を優しさをもって送り出そう
さようならヤルダバオト