寒い夜だったからだろうか.
夢で,懐かしいあの子に会うことができた.
私はとても嬉しかったのだけれど,そんなときに限って明晰夢だった.
lucidus somnium
別れがすぐに来るとわかりきった再会というのは,何とも意地が悪いもので,夢というのはいつもこうだと私はうんざりした.
けれど,会えてよかったと思う.
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たとえば、クレイドル、だろうか。
砂浜でまるで石になったように座って動かない少年。
その膝の上に順番に、かわるがわる猫たちが眠りにやってくる。
その様子をぼうっと見ている。観察しているといった方がいいか。
あの少年にまだ意志は残っているのだろうか、と疑問に思う。
猫たちがやってくるのは、少年の膝が暖かいからだろうし、
オートメーションめいてはいるが、少年の両手は優しく、正確に猫の体を撫でている。
そんなことを考えていると、私の足の周りにも猫が現われた。
錆柄、と思ったけれど、錆猫なら茶色い部分が、その猫は白かった。珍しい。
(あの様子だと、天使が海に堕ちて溺れてしまっても、助けに行かないかもしれない)
んーー、と私は考えて
「ああ、あの少年、誰かを待っているんだ」
(それは知らないけれど)
「でなければ、幸運とか?」
(幸運というものを期待するようには見えないけれど)
それもそうかもしれない。私よりも彼らの方がよほど詳しいだろう。
「あるいは、優しさ、とか?」
猫は呆れたように大きく欠伸をして、少年の方へ軽やかに走っていった。
彼の順番が来たのだろう。
そういう訳で、私も行くべきところに行くことにした。