疲れて帰って
通勤鞄を布団に投げると
もう、自分の顔が判らなくなる
会社に行くときはサラリーマンの面を被り
人と話すときはまともで、ボケもできる人間の面を被る
猫に会えば、猫に愛される面を被り
美人に会えば、なんかそんな面を被る
結局のところ、自意識は存在しないのではないか
そのときそのとき、取りうる限り最善の面を選んで対応する
独りになったときにあらわれる意識は
おそらく、付け替え続けた仮面のログの残りかすのようなものなのだろう
で、あるならせめて、まともな面の残りかすが
多かったなら、自分も少しはまともだと思えただろうか
独りになって、浮かび上がる自意識は
例え浮かび上がってこようが
私のそれは
虚無としか言いようがなかった