全てが終わって少年にはほとんど何も残っていませんでした。
識域、塑像、甚深のエラスムス
あるいは星辰のヘラクレイトス
峻烈な太陽
あるいは筮竹に示された跋文
揺曳の陽炎、その中に投影される彼らの背中

懐かしい当惑、失われた闡明
喨喨たる誰かの歌声
言語の分解、ウーファー、ツイーター
女神、あの少年
酷薄な敷衍
「不完全なエンテレケイア」
「もう終わったのね」
声に我に返る。それはアナムネシスではなかった。
「まだ何か少しだけ残っている気がします」
「生きている限り、何事も完全には終わらないわ」
飽き飽きした唯我論、結局は内破でしかない
ルジェーロと聞こえた気がして振り返る
「……ルチフェロ……」
少年悲しくなりうなだれる。
露天積みされた本の上で心地よさそうに眠る猫、そこに彼の残滓を見つけた