浮かない顔をしているね。
もしかして、夏休みなしなのかい。
そういうわけではないんです。
実は、俺も今日 から休みだったんです。
でもなんにも予定とかないんです。
それだったら、こんなこと言っちゃいけないんでしょうけど、仕事あった方がよかったのかなって思うんです。
旅行でもしたら。
知らない土地へ行って恥をかくのが怖いんです。
旅の恥はかき捨てなのにかい?
向こう見ずなことをするには、勇気がなくなったのかもしれません。
臆病者、といえば満足する?
いえ、そういうのももう、ああそうですかって感じなんです。わかりますか、こういう感じ。
わかるよ、と言いかけて止める。それを言ってしまったら、この会話に何の意味もなくなってしまうからだ。
*
結局、競争社会ですよね。
社会がなくても、競争だろうね。 あるいは奪い合いか。
2人しか、人間がいなくなったとして、それでも人って競争するんでしょうか。
それは……両方男?
どちらでもいいんです。進化、というよりは洗練の果てにある孤独に人間は耐えられるんでしょうか。
最後に一人だけが残る、それが人間だろうか。違和感があるが、言葉にできない。
アンドロギュノスってご存知ですか。
そうだった、思い出した。遺伝子の多様性の話。
1人だけだと、ウィルスにやられてしまうと、それで終わりになってしまうだろう。だから……人は孤独にならない、という本能が、あるはずで……。
私はその言葉を紡ぎながら、疎外され続けてきた過去を振り返る。人間がそんなことを考えて行動をしているとは思えなかった。だが、最後に乗こった二人だけであったら?
この世界のことを考えようって、必死で思うんです。でも俺が考えられるのは俺のことだけなんです。バグっていますか、俺は?
いや、バグって…… 君と機能した会話を思い出す。
正しさを決めるのは数だろうか。あるいは歴史によって作られた秩序、法律、ルール。そこからの逸脱。異常、バグ。
僕は長く長く考えて、咲いたヒマワリが枯れてしまうくらいずっと考えた。(これは嘘)
きっと人間は利己的に、自分のことだけ考えて生きたとしても、孤独にはならないよ。
だって孤独は悲しいもので、だから利己的に他人を求める。多分それは本能的なものなんだ。
彼は少し悩んだ。朝にアサガオが咲いて、そして仕事を終えて休むくらい。(これは本当)
利己的に、他人を欲すること、それは……それが本能だとしたら。
私は次の言葉を待つ。最大化された入道雲が振らせるであろう夕立のこと思いながら。
愛なんて存在しないってことになりませんか。
私はそれに答えられない。答えは明白で、自明で、だから口にする必要なんて微塵もなくて。
でも言うだけ言う。
あまりにも卑怯な言葉を口にする。
彼が将来苦しむことなんてどうでもいい。最低で、卑怯な言葉を舌に載せる。
それは君が決めることだ。