今までは冬至が来るっていうと嫌だったんですけど、今年は来てほしくないって思っているんです。
……どちらも同じだけれど。
今年は、来るのが嫌というより来てほしくないと思っているんです。
……微妙なニュアンスは違うけれど、ほとんど同じじゃないか。
そうですね……。
冬至が来るのが嫌だ。
時間は不可逆だけれど、だからこそ、進んでほしくないと思う。
思うだけで何もできないけれど。
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冬至の時期は、夜暗くなるのが早いから苦手だ。
冬至の時期の夜の暗さと、たとえば夏の夜の暗さというのは違いがあるんだろうか。
そんなことを考える。意味なんてない。
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冬至が来ると、ああ、もう終わりなんだって思う。
ずっと落ち込んだ気分で入れたらいいのに、冬至を過ぎるとだんだん日が長くなっていく。
寒さはそこからが本番だというのに。
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男はあんまんばかりを食べていました。
猫は男が心配でした。栄養は足りているのだろうか、と。この子はとても優しい子です。せめて元気になるようにと、男の膝に乗ってゴロゴロと喉を鳴らしました。
おじさんも男の身を案じました。でも、おじさんは栄養学についてよくわかっておらず、また興味も持つことができませんでした。
おじさんはつまり、自分に興味がなかったのです。猫の食生活は気にしていましたが。結局、おじさんも男も自分をそこまで大事にできないという意味で似たもの同士でした。
男の方は……、いや、やめておきます。
それでもおじさんは照れくさそうに、男に差し入れをしました。肉まんとピザまんです。
男は喜びました。猫も男が喜んでいたので一緒に喜びました。
でもおじさんは、男の表情に影があったのを見逃しませんでした。ほんのわずかの間でしたが。
それでおじさんはすべて判ってしまいました。
男が肉まんから何を連想したのか。男の過去がいかようなものだったのか。
でもおじさんは何も言いませんでした。
男は喜びました。でもそれは食べ物を手に入れたことよりも、おじさんのやさしさに、だったのかもしれません。
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男はこの幸せな生活を失いたくないと思いました。
でも、男の過去から選べる方法は、とても限られていました。
それでも彼らは幸せに暮らしました。
その日もみんなで眠りました。
というのは嘘で、おじさんは自分の部屋で、男と猫は今で一緒に寝ました。
とても幸福な日でした。