腹減ったなあとつぶやく
汚いものが視界をかすめた気がして
振り向くと、やはり汚い男がそこにいた
目を背けられずにいると
彼は胡乱そうに、それでいて想像よりも親切な声音で
どうかしましたか、と答えた
私は
あなたの存在は危険だ、と直感を得たのですが、
とはまさか言えず、言葉を濁した
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あなたの存在は神を否定する
あなたがただそこにあるというだけで
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哀れなあなたを神は救わない
その一点において、この世のルールは覆る
全ての基盤の破壊
世界の由来の消失
現れる無味乾燥な事実
探求を辞められない無意味さ
あなたは存在してはいけない
、気を付けたつもりで口に出ていた
彼はそんなことはよく言われるとばかりに
あなたは存在していているのに
僕は存在してはいけないのか
仮に僕の存在が神の存在を否定しかねないという理由であれば
僕は怒らねばならない
なぜなら僕以上の不幸など
どこにでも転がっているからだ
■■の話を知っているか
この国から出たことはあるか
それを許容しておきながら
私を許容できないというのはおかしい
彼は絶望的なまでに勘違いをしていた
彼は論点を不幸であるか、その点に限定しようとしたが
それがすでに誤りだ
私はあなたを哀れだと感じたのだ
物質的に限らず、果てしなく
まず最もさじなことを指摘すれば
あなたはなぜ靴を履いていないのですか
いや、違う、他者との比較ではなく哀れでないと言えますか
彼は少しの間、黙っていた
それは天命を受け入れたようでもあり
逮捕される瞬間のあきらめにも似ていた
悟ったような憐れむようなまなざしを彼は私に向けた
憐れもうというのか、あなたが
■■は裸足でも歩いたよ
ポツリと彼はこぼした
そういう話ではないといったはずだと
口にしようとして、できなかった
思考が支配される
本の一文を思い出してしまう
ダメだ
マネがしたくて仕方がない
たまらず
自分を■■と一緒にするだなんて
彼は俺はずっと■■だと思ってきたんだよ
そう答えた
彼もまた待っているのか
きっと永遠に
存在自体が否定であるのに
彼の待つという行為は肯定に他ならない
これは矛盾、
しかし、それこそが人間なのかもしれない
憎み、愛するとは違うが
否定し、肯定する
だが、だとしても
私は言わなければならない
言わなければならない
告げねばならない
それはすべてごまかしなのだと
彼にはあきらめを教えなければならない
私はサンダルを購入し彼に渡し
彼は何かを悟ったように逃亡した
結局、彼は神話の終わりを理解することが怖いのだ
永遠に待ち続けるのだ
自己を■■と同一視するなど……愚かな