蒸し暑い夜だった。
なんて、最近はずっとそうだよね。
なんていうか天気の多様性がないって言うか。
日中暑くて、夜も暑い。それだけって感じ。
夕立なんて全然降らない。雨自体ここ10日くらい降っていない。
なんでこんなことになったんだろうね。
その問いに答える人は誰も居なかった。
……どうして俺は一人なんだろうね。
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クーラーのよく効いたスーパーから外に出た瞬間、眼鏡が曇った。
どうしてだろうと考える。
そして結局のところ、この手の問題は飽和水蒸気量の話になる。そんな気がした。
冷えた眼鏡のレンズ、蒸し暑い外の空気、飽和水蒸気量が違い過ぎたんだ。きっと。
この推理だって誰にも披露できない。
僕は点滅する信号機をぼうっと見つめて、天国を想像して。
自分の想像力の乏しさを自嘲する。
天国は彼らが幸せそうに微笑んでいる。
神のいない天国。
俺の落ちる地獄。
君たちが幸せだったらそれでいいことだ。