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かつてあったはずのなにか

皆様に幸多き事、お祈りいたします ※ わけあって画像の多くを消しました。意味が通らない箇所があるかもしれません。申し訳ありません。 文章雑な所がありますので、斜め読みで大丈夫です。 記事が表示されない場合は、削除がまだ反映されていないのだと思います。大変申し訳ありません。

テオドリクス3



空に月と星、地上には遠くに羊の群れが見えている

テレイザの家の外

ディートリヒは仕事に出て、テオドリクスはメシエーを見つけてそばに座っている。
テオドリクスはメシエーを撫でようとするが、メシエーは一定以上に近づくことを許さない。

けれどテオドリクスを嫌っているわけでもない。
ただ、自分のような距離感のものもいた方が、おそらくはこの関係のバランスが取れると考えての行動。



空を指さしながら、ひとしきり言いたいことを言った男は静かになった。
ぼうっと空を見上げて、寝転んでいる。

羊をたまに気にしながら、この男について考える。

ディートリヒが巡礼の際に世話になったという。
おそらく嫌な奴ではないのだろう。

ディートリヒは俺のことを人見知りだと揶揄するけれど、あいつだって大概だ。
俺の人見知りは警戒から威嚇、という行動につながるが、あいつの場合は警戒から隠れるという行動につながる。

この男、さっきまで星がどうとか、ずっと話していた。

メシエコードがどうとか

メシエカタログがどうとか

月だの星だの、言われたところで、俺にはどれのことかわかるはずもないのに。
……いや、月ならわかるが。

大体、名前がメシエーだからといって……。

……たしか、ディートリヒのことも名前が同じだとか、なんとか。

言葉、概念、実際そこにあるものよりも、おそらくは表面を見ている。

表面の類似性をことさらに語って、おそらくそれ以上は踏み込んでこない。

その浅薄さと臆病さ、それがテレイザの気にいらないのだろう。



この男の性質、穴、影、夜。

いや、凹み、だろうか。

猫はそういった場所が好きだから、ディートリヒが懐くというのもある意味納得できる。

そして、テレイザはその凹みを許せないのだろう。

叩いたところで、矯正なぞできるものではないと、彼女なら判るだろうに、それでも言わずにはいられないのだろう。

そういうとき、テレイザは随分と子供じみて見える。あるいはお節介な母親、……違うな。まあいい。



しばらく後、ディートリヒが仕事を終えてこちらに走ってくる。

頬には血がついていた。ディートリヒは綺麗好きだが、ぬぐい切れていないのだろう。

この男はどんな反応をするのだろうか。少し興味があった。

テオドリクスは当然のように優しく抱き上げた。そしてディートリヒは男の顔に頬ずりをした。

「ディートリヒ、血が出ていませんか」

(いえ、大丈夫。それは返り血だから)

男は、ならよかった、と安心したように笑った。

少し意外だった。もう少し、なにか、幻滅のようなものを期待していたのかもしれない。

頬に血を付けたまま彼らは微笑んでいた。

なるほど、こいつは、こいつらはハウンズだと、納得した

本質的にディートリヒと同じなのだ。

俺はシェパードだが、こいつらはハウンズだ。

なんだ、と思う。この男はわかっているのだ。生きるとは結局そういう行為であると。
この男の凹みはそうして出来上がったものかもしれない。

テレイザが言っていたか。たしか……羊頭狗肉。

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